掲載日:平成28年01月分
あの土地は、タダで貸しているから、いつでも返してもらえる・・・・。
実は、そんなに都合良くはいきません。
当事者の一方が無償で使用及び収益をした後に返還をすることを約して、相手方から目的物を受け取ることを内容とする契約のことをいいます。(要物・無償・片務契約)
土地をタダで貸すことは、使用貸借となります。
一方の当事者からの目的物(土地)の引渡し、その他の給付があってはじめて成立する契約のことを要物契約といいます。
無償で使用及び収益をする契約のことを、無償契約といいます。なお、多少の金銭等の交付があっても対価性が認められない限り無償契約となります。
契約当事者の一方のみが対価的性質を有する債務を負っている契約のことを、片務契約といいます。使用貸借は借主が返還の債務を負うのみであるため、片務契約となります。
使用貸借は親子や親族間で交わされることが多く、また口約束となることがあり、『期間の定めのない契約』となっていることが多いのではないでしょうか。この場合、過去の経緯を知らない相続人が地主となった際に、『相続税もあるし、土地を返してもらいたい。』と思っても、簡単ではありません。
使用貸借の土地を相続税評価する際、借主の権利は「0%」・貸主の権利は「100%」で評価します。そのため、『借主の権利はゼロなんだから、すぐに返してもらえる。』と誤解しがちですが、税務上はゼロ評価であっても、民法上はそれなりに強い権利になるため、すぐに返してもらえない事例が多くあるのです。
では、期間の定めのない使用貸借はいつ終わるのでしょうか。
民法上は、
1.使用貸借契約に定めた目的にしたがった使用収益が終わったとき。(民法597条2項本文)
または、
2.それ以前でも、使用収益をするのに足りる期間が経過し、かつ、貸主が返還を請求したとき(同項但書)
となっています。
しかし、『使用収益をするのに足りる期間が経過し』の判断が事例によって異なるため、終期の判定が困難となるようです。また、借主の死亡により終了するとの規定も別にありますが、使用貸借を存続させる特約は認められています。
そのため、使用貸借は人間関係等の諸般の事情次第で終わったり、続いたりと微妙な契約であるといえ、明け渡しを要求すれば即明け渡してもらえる、というものにはならない訳です。
こういった点からも、新たに土地の使用について契約を行う場合は、No.45でご紹介した、「一般定期借地権について」でのご契約を検討されてはいかがでしょうか。
この情報は2016年01月時点の情報を元に執筆されています。最新の情報とは異なる場合もございますので、あらかじめご了承ください。